Alchemistfile
最終更新日...2021/01/31
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※2016/02/22にプライベッターに上げたリクエストSS※加筆修正しました
本日の任務は、強欲な男の暗殺と商品の無事だ。
傷つけることは依頼違反。男以外殺してはならないのだ。
その男は「金」「酒」「好色」だけでなく「闇商売」の噂まであるときた。
まぁ、テンプレのような悪者だ。
その男がなまじ権力があって悪知恵が働くものだからそういった闇界隈の奴らからも嫌われていて、手を焼いた末に依頼が舞い込んだというわけだ。
この日の為に依頼主から貰った貴族の服と、細くしなやかな体躯、美しい顔を利用して男の「商品」の中へ難なく侵入した。
その先ではターゲットの男とその護衛が手に入れた「商品」を眺めていた。
ここからさっさと殺してしまう事も簡単だが、そうしてしまうともう一つの依頼であるほかの商品に傷が付く可能性がでてしまう。
男が一人になるまでは殺す事はできないのである。
何とかして近づくのが第一の目標だ、そんな思考を巡らせながら部屋の中を把握すべく目線だけで辺りを見回した。
勿論、出て行くターゲットに盗聴器付き発信機を投げて付けるのを忘れずに。
都合が悪い事に自分と同じく男の目に叶った者が同じ部屋で縛られていた。
その人は中性的な美しい人物だった。服も貴族のものだ。
どうやら「そういう人」が好みらしい。
依頼主の情報に間違いがなかった事を確認しつつ、何を思ったのかとっとと縄抜けをし、その人物に話しかける。
「よいしょ...っと。」
「...っ!?」
固く縛られていたはずなのに、造作もない事かのように立ち上がる中性的な人物に、叫び声を上げる前に口を塞がれる。
「静かにしてね、危害は加えないから。」
塞いだ手を離し、やんわりと笑うその人は美しかった。それ故か感情が全く読めなかった。
「...君、一体何...?」
「んー?正義の味方♡...今はね。」
相手の縄を解きながら返ってきた答えは、何とも嘘くさいものだった。
「今は...?」
「細かいことはいいさ、君、今からあの男の慰みものか、売り飛ばされるかどっちかみたいだけど助かりたくない?」
盗聴器から得た情報をまるで世間話の様に話すクロネコに相手は驚きを隠せずにいた。
「...!?男の慰みものか売り物だと!?俺はこれでも男だぞ!そんな真似されてたまるか...!」
「捕まってちゃ世話ないけどね。あはは、ごめんね?気に障ったかな?」
「いや、事実だから構わない。不覚を取ったものだ、自分でも呆れる。俺が貴族だから身代金目当てかと思ったがそうではないのだ
な。それともあいつは俺を女と勘違いしているのだろうか。」
「いや、男でも好みなら喰うらしいよ。」
笑いながら冗談めいて言うが、冗談かどうかわからないところが怖い。
「貴様!悍ましい事を言うな!」
「えー、僕の情報は確かだよ?」
「そもそも貴様は男女どちらなのだ?」
クロネコの体躯は細くしなやか、女でいても男でいても不思議ではなかった。
声や顔立ちも中性的。
女ならば守らねばならないと正義感でも働いたのか、それとも単純な好奇心からか
ここに来て素朴な疑問をぶつける貴族の青年は案外余裕が有るのかもしれない。
質問を投げかけられたクロネコは今まで笑ってた目を開けて金色の瞳をスっと細めた。
「知りたい?」
別に怒気を孕んだ声ではなく、普通とかわりない声のはずなのに、その淡く光るような瞳に何とも言えない恐ろしさが青年を包んだ。
まるでそれ以上踏み込むなと言わんばかりに。
「.......悪かった。」
震えた声でそう答えるのが精一杯だった。
「いいよ、頭のいい子は楽で助かるねー。さて、そろそろ答えを聞こうかな?」
「ああ、助かるものなら助かりたいが、どうするのだ?」
「そんなの簡単さ、帰り道ならバレないルートがちゃんとある。そこを通ればいいんだ。はい、地図。君は賢そうだからすぐわかるさ。」
先と変わらぬ笑顔で放つ底の知れない存在を前に、青年は深く考える事を放棄した。
「...俺の名はユリウス、君の名を聞こうか。」
地図を受け取りながら律儀に名を言う青年にほんの少し驚いたクロネコだが、その様子は一ミリも表に出ることはない。
「(ユリウス...確か名門貴族の一つにそんな名前の王子が居るって聞いた事あったな...)...僕はC.N.クロネコって言うんだ。依頼があったら呼んでね♡報酬しだいで受けてあげるよ?」
「クロネコか(コードネームという事は本名は聞くなということか...)、宜しく。さあ、こんな場所出てしまおう!今から行けば出発の前には城の兵に連絡が付く、早く...」
そういって少しよそ見した隙にクロネコと名乗った不思議な人物はいなくなってしまっていた。
あの人は一体何者なのか、自分と同じく捉えられた貴族ではなかったのか、すべての疑問は聞いてはならない気がしたから忘れる事にした。
示された出口から無事出ることだけ考えた。
「(んー、邪魔だったし逃がしたけど、貴族に恩売るのもいいよね、あの子きっと馬鹿じゃないし。)...さて、行きますか。」
そう言いながら向かった先は勿論ターゲットの部屋。
女も男も綺麗な人ばかり集めて侍らせている。
あれは売らずに置いた「商品」なのだろう。
正直邪魔だ。
依頼はターゲットのみの暗殺。
それ以外を殺したり、現場を見られたりすれば阿鼻叫喚の地獄絵図になるだろう。
アレらも商品なのだとしたら傷つけてはならない。
依頼主が外で待機しているから外に出しさえすればいいが、簡単な話ではない。
やはり商品を誘導してやるより、頭を潰す方が早いと考えた。
見た所ガードマンも雇われの無能、使えそうな奴はいない。
依頼料が莫大なだけあって骨の折れる仕事だが、楽しんだもの勝ちだ。
あの空間に自分が入り込むしかない。
手っ取り早い方法を取ることにした。
ーーーーガシャンッ
部屋の外のドアの前にある見るからに偽物の花瓶を割ったのだ。
明らかに商品ではない物を。
その音を聞き付けてきたガードマンらしき人物にわざわざ囚われる。
「あぁ、嫌です、やめてください...!」
おまけで演技もつけた。猫のお遊びだと誰も気づかないままにあれよあれよと室内へ通される。
「この屋敷の物を壊すとは...覚悟は出来ていような...?」
素人の殺気など毛程も怖くはないが怯えたふりをして男の気分を良くさせる。
こういう奴ほど最後が絶望に塗れた表情をするからたまらない、そんなことを考えながら笑いそうになるのを堪えてお遊びを続けた。
「...申し訳御座いません、どうせ無くなるこの命、その前に貴方様に一目だけでもお会いしたく、見張りの方に頼み込んだのです、しかしその途中に躓いてしまって...」
如何にもないい訳だがこの手の奴は相手の話の中身より顔を見ているので問題ない。多少の矛盾などこの色ボケには届くことはないのだ。
「ほう...この私に...しかし私は美しく可憐なものにしか興味はないのだ...が、お前は中々に美しいな。どれ、「特別室」へ通してやろう。」
そら来た簡単だ、表面さえ取り繕えば節穴共など簡単に騙せる。嗚呼、至極退屈だ。
飽きてしまう前に任務を終えようと考えた。
自分の顎を持ち上げニヤニヤするその顔は不快だが、
ここまでいってしまえばあとは容易い。
難なく特別室へ通された自分はやはりというか何というかまた縛られている。警戒心は強いようだ。問題はないが。
背後で鍵のかかる音がしたから普通ならこの空間は密室なのだろう。
「さぁ、お前の望みはなんだ?私がお前を買おう。花瓶の件も水に流そうぞ!」
どうだ、懐が広いだろうと威張る男は満足気だった。
「そんな...恐れ多いです...」
「ほう、謙虚な所も気品が溢れているな...お前のような貴族がいたか。」
余計な事に気づかれる前に片付けてしまおうと行動に出る。
「あの...縄を解いて頂けませんか...?」
自ら解いてもいいが騒がれてはたまらない。駄目元で頼んでみた。
「お前のような美しい人が縛られているのは絵になると思わないか?剥いて性別を知りたくてたまらなくなる...どちらでも問題はないがな。」
こいつ話が通じない奴だ、と直感で判断した。
ついでに性癖は聞いていない。
そんな事を考えていると、ベッドに放り投げられた。
「この部屋は防音完備だ、叫んでも人は来ない、出るには鍵しかないぞ。」
こちらへの好条件ばかり提示しているとも知らずに、薄汚い笑みを浮かべ、情欲に塗れた瞳は非常に滑稽だった。
「あの...私...」
か細い声で話し出すと更に男が喜んでいるのが分かる。
「...寝技が大得意なんです...よ!」
そう言って男の鳩尾に殺人的な蹴りをお見舞いする。
そのまま流れるように相手を押さえ込んだ。
「な、...ぐっ...縄で...縛ったはず...」
「手加減はしたけどもう話せるんだー、頑丈だねぇ。縄抜けされた事より今の自分の状況考えたら?」
小馬鹿にしたように笑うがどこか冷ややかな視線は拭えない。
「...金か!?何が必要だ!!!ここから出るには俺がいるぞ!!!殺せばかなわないぞ!!!いいのか!!!」
自分の命が危ないと察知した途端この態度、さらに歪む瞬間が楽しみにしつつ会話を続けた。
「えー、部屋から出るのにお前が必要?あっはは、面白い話するね。」
「....!?」
「探し物はこれかい?お前を蹴り上げて押さえる間に拝借したよ♡」
男が必死に顔を上げて見た先にはニコニコと笑いながら鍵を指に引っ掛けてくるくる回している姿が映った。
その姿に驚きと絶望の入り混じる男の顔に満足したのか瞳を静かに開いて言った。
「お前、僕に欲情するなんて100年早いよ、気持ち悪い。まぁ、いい夢、見れたでしょ?」
男はそんな話より、口調や一人称が変わった事より、その瞳に囚われて嫌な汗がにじみ出る感覚に襲われて気絶寸前だった。
本能が告げる、敵にしてはいけないと。殺されると。どんな最後なのかそんな想像をする事もこの男には叶わない。
思考が混濁して停止する。
「なんだ、もう話せなくなっちゃったの?つまらない。いいや、最後のその顔だけは少しの間覚えててあげる♡」
そう言って無駄な動きは一切なく得意のワイヤーとナイフでターゲットの最後を締めくくって部屋を出た。
その数分後どこかの貴族の部隊と依頼主がこの現場を収める所をどこからか見届けて闇夜に消えた。
人々は告げる。
猫のように気紛れで、神出鬼没、正体不明の人物の話を。
悲劇も喜劇もお手の物、狂気に濡れた瞳に魅入れば戻れないと。
実しやかに囁かれるその噂の真実は..........
もう力尽きました!!!!!!
矛盾とかあったらごめんね!!!!!
一応拙いながらも頑張ったから見てくれれば幸いです!!!!!
お題内容は
・わざと捕まって敵の巣に楽々と侵入、隠し持ってたナイフで拘束してあった縄を器用に解く
・奪った鍵を指でくるくる回して「探し物ってこれのこと?」って言う
でした!!